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最低基準

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契約の自由と制限

契約の自由という考え方は、民法全体を貫く、とても大事な、原則的な考え方です。個人なり法人同士が、対等に合意する契約では、どのような契約条件でも締結することができます。
しかし、ベニスの商人のように金を返さなければ胸の肉1ポンドなどいう契約は、今日の日本(おそらく世界のほとんどの国で)無効になります。契約は自由にできるはずなのですが、制限をかけるほうが公の福祉につながる場合や、そもそも対等な契約を結ぶことが不可能な両者の場合には、様々な規制がかけられています。
労働、雇用の問題だけはなく、たとえば保険では、保険会社の知識量は一般人を圧倒してしますから、対等な契約などそもそも不可能です。
企業同士であれば、ある問題についての知識が不足して不利な契約を結んでしまっても知識がたりない企業が悪い(弱い)だけで問題は解決です、
保険の知識を保険会社と同等に持たねば、保険契約は怖くてできないとなると商品そのものが成立しなくなるでしょう。そこで様々な規制がかけられます。

労働者は弱者である

労働法では、会社で働くことは「従属労働」としています。つまり労働者は弱い立場にあるとしています。経済的に従属していますし、使用者の業務命令に従うという人格的な従属が存在しているからです。
そこで「適性」な労働条件の確保をするために、労働法では、契約の自由を制限することになります。

労基法と刑事罰

労働関係の法律の中で、労基法は刑事罰ある法律です。労基法の最低を満たさない部分は合意した上での労働契約をしても無効になります。契約の自由、個別の合意に優先する法律ですから、、労働法は強行法規という強い法律です。これは、労基法などの他に、最低賃金法、男女雇用機会均等法なども、強行法規です。
強力な労基法なのですが、刑事罰があるということで、罪刑法定主義で解釈や適用が厳格になされています。労働者の人権も大事ですが、使用者にも人権があります。刑事罰となると、使用者の人権を守るために、やはり慎重に運用されることになります。結局、柔軟な運用を阻害しているという面もあると言われています。
例えば、賃金を全額払わないとすれば、賃金不払いは労基法24条に違反するとして、割と簡単に話がつきます。しかし一方、賃金額を争うということになると、違反の判定、判決は難しいことになります。例えば、賞与などは、合意があったなかったというのは、簡単に有罪、刑事罰まで適用するのには、慎重にならざるを得ないでしょう。
一方、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、高齢者雇用安定法、労働契約法などには、刑事罰がありません。民事的効力しかないので弱い法律というイメージもあるのですが、罪刑法定主義に基づき運用する刑事罰のある労基法よりも、柔軟な解釈ができるため、労働者の意思での権利主張がしやすくなっています。

最低条件

労基法などは、「適正」な労働条件を目指したいという理念がありますが、実際は「最低条件」です、最低条件を満たさぬ職場の求人情報がハローワークに出ることはまずないのですが、最低条件では、場合によっては生活保護の受給者よりも、条件が悪いという指摘もあります。
何が「適正」なのか、ケースや立場によっても大きく異なるでしょう。